2011/03/19 早野教授クイズに挑戦

福島の原子力発電所の事件について、twitterで正確な情報を迅速に伝えている早野教授(@hayano)が、理系学生に対して問題を出している。回答を作成するためにいろいろ調べているうちに、自分が如何に不正確な知識しか持っていないかが分かった。



■問題1
【理系学生必修】今,半減期8日のI-131原子核が10000個あったとします.8日後に何個残っているか答えなさい.最初の数が2個の場合はどうでしょう?最初の数が1個だったらどう?

■問題1への回答
・I-131が10000個あった場合
およそ5000個残っている。正確に言えば、5000±50(68% C.L.)
・最初の数が2個の場合
2個残っている確率が25%
1個残っている確率が50%
1個も残っていない確率が25%
・最初の数が1個の場合
1個残っている確率が50%
1個も残っていない確率が50%




■問題2
【物理学生必修】ヨウ素(I-131)が検出されたと報じられています.I-131であることを確認する原理を,100字以内で述べよ.

■問題2への回答
核分裂の結果生じるI-131は不安定な原子核であり、ガンマ線を放出しながら安定な状態に戻ろうとする。放出されるガンマ線の主なエネルギーは364KeV、637KeV、284KeVである。Ge半導体などエネルギー分解能の高い(数eV)検出器で、これらのピークを同定することでI-131の存在を判定できる。




■問題3
【物理大学院生必修】I-131を検出するのに必要な測定器と,その測定原理について述べよ

■問題3への回答
ガンマ線のエネルギーを高分解能で測定できるGe半導体検出器を用いる。ガンマ線半導体中の欠乏層を通るときに生成される電子・正孔のペアを、逆バイアス電圧によって加速し電極で収集する。得られた電荷の量が、ガンマ線のエネルギーにおよそ比例する。Ge検出器のバンドギャップが小さいため(数eV程度)、高分解能でガンマ線のエネルギーを決定できる。




■問題4
【物理大学院生選択問題】I-131が出す放射線の種類をすべて述べよ.I-131であることが確認できる放射線の種類とそのエネルギーを述べよ.

■問題4への回答
http://ie.lbl.gov/education/isotopes.htmを見て調べた。
ガンマ線(主なもの)
エネルギー
80.185KeV 2.62%
284.305KeV 6.14%
364.489KeV 81.7%
636.989KeV 7.17%
722.911KeV 1.773%

ベータ線(主なもの)
エネルギーの上限値
247.89KeV 2.10%
333.81KeV 7.27%
606.31KeV 89.9%

ガンマ線のエネルギーは上記の値で決まっているため、I-131の存在の証拠として用いることができる。
ベータ線のエネルギーは、上記の値を上限とする広い分布をとるため、I-131の存在の証拠として用いることができない。




■問題5
【地球物理学生必修】天然放射線による被曝量が,その人が住んでいる地域によって異なる理由を,簡潔に答えなさい.

■問題5への回答(私は地球惑星科学専攻だが自信が無い)
屋内では被曝量は、建材等に含まれるK等の量の差に大きく依存する。
屋外における天然放射線による被曝量の差は、その地域の地質構造の違いが影響している。
環境ガンマ線を発する主な放射性元素は、U、Th、Kの3種類であるが、
それらの元素の取り込まれやすさ(分配係数)は、流紋岩質・安山岩質、玄武岩質で
大きく異なっている。また、地質年代が古くなるほど、これらの放射性元素は減少していく
ため、地質年代の違いが被曝量の違いを生む可能性もある。

参照 http://www3.starcat.ne.jp/~reslnote/A8_6.htm#59

(私は、定量的にはよく分かっていない)



■問題6
【理系学学部生必修】半減期Tの放射性物質の個数Nの時間変化N(t)をあらわす微分方程式を即答せよ.

■問題6への回答
時間t後の個数N(t)は、N(t) = N(0) * exp(-(ln2)*t/T)
これより、微分方程式は、-dN(t)/dt = (ln2)/T * N(t)。



■問題7
【理系学生選択】測定値15020 Bq/kg などと報じられていますが,同じサンプルを,その直後にもう一度測定するとどうなると考えられるか,簡潔に記しなさい.http://bit.ly/eAWzLW

■問題7への回答
直後に測定したとすると、I-131の量自体は前回測定時と変わらないと思われる。
次回測定時に前回測定時との差が生じたとすると、それは、サンプル量(kg)と測定時間(s)の小ささから来る統計誤差だろう。
この測定に用いたサンプルの量と測定時間が明示されていないため、その統計誤差がどの程度であるのかは議論できない。