2010年10月10日〜19日 イタリア・ナポリ〜研究集会での発表など〜

宇宙線ミューオンを用いたラジオグラフィーに関するイタリア・フランス・日本等の研究グループが集まるワークショップに出席するために,イタリア・ナポリに1週間ほど滞在した.

http://mu-ray.fisica.unina.it/events/workshop_oct10/index.html



■発表

2日目の午前に発表.
ベストな実験結果ではなかったが,なんとかなった.



■実験

イタリアのグループと我々のグループは,異なるタイプの半導体検出器を使っている.実験室を貸してもらい,イタリアのグループの半導体のテストを少しだけやらせてもらった.




■イタリアのグループの研究環境を見学

●νμ→ντ→τ事象の乾板を見せてもらう
OPERA実験の原子核乾板読み取りの装置を見せてもらった.
実際にτ事象を捕らえた乾板を顕微鏡で見せてもらいながら解説してもらった(実はすごいことだと思う)

●ベスビオ火山の検出器を見に行く
検出器位置から臨むベスビオ火山

検出器の入ったバラックに隣接する土産物屋では,ベスビオから実際に噴出した火山弾などが売られていた.

が,なんだこれは?

「見ざる,聞かざる,言わざる」は日本のものだと言おうとしたが,英語で何と言ってよいか分からず,言わなかった.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E7%8C%BFによると,8世紀ごろに天台宗の教えとして伝わったものである可能性があるらしく,結果的には言わなくて良かったということかもしれない.

●INGV(Instituto Nazionale Geofisica e Vulcanologia)に行く

イタリアのグループが行おうとしているストロンボリ火山でのミューオン観測について話を聞くために,INGVを訪問した.ちょうど私の所属する地震研究所のような研究施設である.

イタリアの全火山における地震計の情報を集約している部屋があり,そこが格好良かった.

●番外編

ナポリ大学の食堂の前にいた犬.なんとこの犬はペットボトルのふたを自分で開けて水を飲むらしい.




■個人的に感動した事項

●セラピス神殿の3本の柱

INGVを訪問した後に,ナポリ大の先生に食事につれていってもらった.
ポッツォーリという街で,非常に景色の良いところだった.

だが,この3本柱,どこかで見覚えがあるぞ...

ライエル地質学原理の表紙だ.

よく見るとこの石灰岩質の柱は,根元は白く元の石灰岩の色を残しているのに対して,根元から数メートルより上は灰色になってしまっている.灰色の部分は,かつてその部分が海面下にあり,ある特殊な二枚貝石灰岩の骨格を食べてしまったことを意味している(『地球46億年全史』リチャード・フォーティによる).何の変哲もない柱に見えるが,この地域の隆起・沈降の歴史をその姿に留める生き証人だったわけである.

とても感動したわけだが,とにかく先生の紹介してくれた店のシーフードパスタはめちゃくちゃ美味しかった.


ポンペイ

大学一年生のころ,渋谷の文化村で開かれた「ポンペイ展」を見て以降,一度訪れてみたかったポンペイに行くことができた.

円形劇場

かまど

売春宿のある方向を指し示す印(露骨過ぎないか?)

火山からの噴出物によって一夜にして埋もれてしまったポンペイという街は,しばしばロマンチックに語られがちであるが(ポンペイ展に魅せられた僕も実際そう思っていた),ポンペイの貴族は非常に享楽的で退廃した生活を送っていたようである.例えば,貴族はベッドに寝たまま食事をする.そして大量に食べては吐くということを繰りかえしていた(食べたものを吐くための部屋がある).また,ポンペイ遺跡は500メートル四方程度のサイズなのだが,その中に25もの売春宿が見つかっている(都内におけるコンビニの密度より高いよね).


●国立考古学博物館

とにかく素晴らしいの一言.

イタリアのグループが論文にも引用してた絵.絵中の左にいる葡萄に包まれた男はワインの神様らしい.後ろの山はベスビオ火山.



■最後に

ナポリのよかったところ
●ピザが美味しくて安い(3ユーロ〜)
ナポリ生まれナポリ育ちの人に教えてもらった"sorbillo"という店が最高だった.2回行った.
http://www.accademiadellapizza.it/index.php
●何かみんな楽しそう
よく分からないけど,総じて幸福度が高そうだよね,という話になった.
街の人は結構親切で,道が分からなくて困ってたら,教えてくれたりした.

よくなかったところ
●レストランでぼられる
とあるレストランで10ユーロくらいぼられた.
ぼられた上での価格でも安く感じてしまうけれども,腹が立ったので,
「領収書をくれ」と言うと慌ててレジを打ち直して
「計算が間違っていた」とかなんとか言いながら5ユーロほど返ってきた.
だが,まだ幾分か確実にぼられていたと思う.

総じて楽しかったです.